相生山に人工の庭は要らない
相生山はコナラ(小楢)を高木層の代表とする【雑木林】が、その魅力です。人が意図的につくったものでなく、むしろ人が手を加えなくなってから自然に形づくられた二次林です。

谷筋の上の小さな広場から展望すると、小規模ではありますが《コナラの樹海》がきれいです。葉の落ちた冬の今でも樹形の美しさに惹かれますし、うす緑から若緑が広がっていく芽吹きの春や金褐色に輝く黄葉の時期も見事です。
しかも、この樹林に入ってみると、亜高木層・低木層・草本層に、それぞれ適応した樹木が生育しており、そのなかに昆虫や鳥類などの動物が生息していて、名古屋市という大都会のなかには稀な生態系を、全体として形づくっていることが、しばらくすると理解できます。
有名になったヒメボタルも、相生山の象徴種ではありますが、人類の誕生以前から連綿と続いてきた数ある生命の一種にしか過ぎません。

ところで、この相生山には “この森では「名古屋市緑のまちづくり条例」に基づき、「緑のパートナー」として名古屋市から認定された「相生山緑地オアシスの森くらぶ」が森づくりを行っています。名古屋市” という看板が示している通り、市と協働する形で市民ボランティアグループが「森づくり」活動を展開しています。こちら
今年の始めからも「ツツジや桜の園をめざす」とされる一帯で、伐採が行われたようです。いつもながら「森を暗くし生物多様性を損なう」常緑低木をいっせい伐採。

相生山緑地の北部「オアシスの森」とされている区域では、ここ3~4年のこうした活動の結果、樹林地の中に「伐採地」がどんどん広がっているような感がします。生産緑地などの民有地を含めると最近「人の手が入った」区域は全体の1/4~5くらいにまで拡大したように感じます。
毎月末から月始めに相生山を歩くたび「日当たりのいい場所が増えた」「風の通り道が広がった」「ずい分見通しが良くなってしまった」とぼう然とすることが多くなりました。
森林に生育・生息する多くの生きものたちは、水分も保障される半日陰をもっとも好むものだと思うのですが、これでは行き場(生き場)を失うもの、すでに失ったものがいるのではないかしら。

伐られた木が集められていました。
本当に学習し調査したうえで実行されているのでしょうか。長年人びとの暮らしに役立ってきたヒサカキ(姫榊)やソヨゴ(冬青)以外に、これからの森の主人公になっていくシイ(椎)やアラカシ(粗樫)に交ざって、半常緑のモチツツジ(黐躑躅)までも伐られていました。主体的には真剣に熱心に取り組んでみえるのかもしれませんが、「自分たちの手に負えない太い木・高い木以外は伐って、とにかく見た目がスッキリきれいになればいい」やっつけ都合仕事をしているように見えてしまいます。
こうしたやり方では数年しないうちに広葉樹たちは萌芽更新し、人が手を加える以前の状態とは異なった不格好でどうしようもなく暗い人工樹林を呼び込んでしまうのです。無理なことは無理、人は自然をコントロールすることなど到底できない。その実例は相生山にもそこかしこにあって、「また手を入れなくっちゃ」の悪循環を繰り返していそうです。
2015年7月の意見書 同添付資料 こちら

本当に名古屋市は、この実態を確認して「認定」しているのでしょうか。
もっとも市の「緑のまちづくり」計画自体が、人間の生活優先、景観=見た目による快適さに重きがおかれていて、人間をふくむこの世界の生態系そのものに考えをいたす点で、極めて不十分な感を持ちますので、相生山での実践も評価こそすれ批判できないのかもしれません。
日本人は自然に学ぼうとするより、自然をとり込もうとしたり、自然に手を加えることを伝統として生きてきた、と言われることがあります。庭園・公園・個人の庭・盆栽・・・。それぞれにそれぞれの場で行われることに、いちいち申せるはずもありません。
けれども、相生山の樹林地に庭は要らない。人の好みを押しつける場所ではないと知るべきです。冒頭に書いてきたように、ここでは「自然の意思」が優先されてきたから。だから、大事。それを伝えることが、生かす政治が。

自然な森林がそうであるように、私たちは≪いろんなものがさまざまに≫生きていける状態が大事と考えます。誰かによって淘汰・選別・抑制されることなく、≪在るがままに成るがまま≫を愛します。
来たる名古屋市との意見交換会では、「相生山の道路を廃止し、緑地をどう整備していくか」が課題ですから、第一回目は今日のブログのテーマは後回しになっても良いと考えています。
けれども、ここは根本的な問題ですから、避けるわけにはいきません。そして、このことを意見交換しお互いに考え、みんなで方向性を見出すことこそが相生山の未来に通じると思っています。
by Oak

谷筋の上の小さな広場から展望すると、小規模ではありますが《コナラの樹海》がきれいです。葉の落ちた冬の今でも樹形の美しさに惹かれますし、うす緑から若緑が広がっていく芽吹きの春や金褐色に輝く黄葉の時期も見事です。
しかも、この樹林に入ってみると、亜高木層・低木層・草本層に、それぞれ適応した樹木が生育しており、そのなかに昆虫や鳥類などの動物が生息していて、名古屋市という大都会のなかには稀な生態系を、全体として形づくっていることが、しばらくすると理解できます。
有名になったヒメボタルも、相生山の象徴種ではありますが、人類の誕生以前から連綿と続いてきた数ある生命の一種にしか過ぎません。

ところで、この相生山には “この森では「名古屋市緑のまちづくり条例」に基づき、「緑のパートナー」として名古屋市から認定された「相生山緑地オアシスの森くらぶ」が森づくりを行っています。名古屋市” という看板が示している通り、市と協働する形で市民ボランティアグループが「森づくり」活動を展開しています。こちら
今年の始めからも「ツツジや桜の園をめざす」とされる一帯で、伐採が行われたようです。いつもながら「森を暗くし生物多様性を損なう」常緑低木をいっせい伐採。

相生山緑地の北部「オアシスの森」とされている区域では、ここ3~4年のこうした活動の結果、樹林地の中に「伐採地」がどんどん広がっているような感がします。生産緑地などの民有地を含めると最近「人の手が入った」区域は全体の1/4~5くらいにまで拡大したように感じます。
毎月末から月始めに相生山を歩くたび「日当たりのいい場所が増えた」「風の通り道が広がった」「ずい分見通しが良くなってしまった」とぼう然とすることが多くなりました。
森林に生育・生息する多くの生きものたちは、水分も保障される半日陰をもっとも好むものだと思うのですが、これでは行き場(生き場)を失うもの、すでに失ったものがいるのではないかしら。

伐られた木が集められていました。
本当に学習し調査したうえで実行されているのでしょうか。長年人びとの暮らしに役立ってきたヒサカキ(姫榊)やソヨゴ(冬青)以外に、これからの森の主人公になっていくシイ(椎)やアラカシ(粗樫)に交ざって、半常緑のモチツツジ(黐躑躅)までも伐られていました。主体的には真剣に熱心に取り組んでみえるのかもしれませんが、「自分たちの手に負えない太い木・高い木以外は伐って、とにかく見た目がスッキリきれいになればいい」やっつけ都合仕事をしているように見えてしまいます。
こうしたやり方では数年しないうちに広葉樹たちは萌芽更新し、人が手を加える以前の状態とは異なった不格好でどうしようもなく暗い人工樹林を呼び込んでしまうのです。無理なことは無理、人は自然をコントロールすることなど到底できない。その実例は相生山にもそこかしこにあって、「また手を入れなくっちゃ」の悪循環を繰り返していそうです。
2015年7月の意見書 同添付資料 こちら

本当に名古屋市は、この実態を確認して「認定」しているのでしょうか。
もっとも市の「緑のまちづくり」計画自体が、人間の生活優先、景観=見た目による快適さに重きがおかれていて、人間をふくむこの世界の生態系そのものに考えをいたす点で、極めて不十分な感を持ちますので、相生山での実践も評価こそすれ批判できないのかもしれません。
日本人は自然に学ぼうとするより、自然をとり込もうとしたり、自然に手を加えることを伝統として生きてきた、と言われることがあります。庭園・公園・個人の庭・盆栽・・・。それぞれにそれぞれの場で行われることに、いちいち申せるはずもありません。
けれども、相生山の樹林地に庭は要らない。人の好みを押しつける場所ではないと知るべきです。冒頭に書いてきたように、ここでは「自然の意思」が優先されてきたから。だから、大事。それを伝えることが、生かす政治が。

自然な森林がそうであるように、私たちは≪いろんなものがさまざまに≫生きていける状態が大事と考えます。誰かによって淘汰・選別・抑制されることなく、≪在るがままに成るがまま≫を愛します。
来たる名古屋市との意見交換会では、「相生山の道路を廃止し、緑地をどう整備していくか」が課題ですから、第一回目は今日のブログのテーマは後回しになっても良いと考えています。
けれども、ここは根本的な問題ですから、避けるわけにはいきません。そして、このことを意見交換しお互いに考え、みんなで方向性を見出すことこそが相生山の未来に通じると思っています。
by Oak

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