相生山緑地の読売記事 After~2

前回からの続きです

 読売新聞の記事では「市が(道路)計画を凍結する理由の一つとしたヒメボタルは減少傾向にある」と述べ、その根拠としてビオトープ管理士の長谷川さんのデータとコメントを引用しています。これに対して、多くの疑問が投げかけられています。

 その最大のものは、「ほんの一部分の人工植栽地でのデータが、相生山緑地全体の整備計画への問題提起になり得るのか」という点です。
㉚シェルター上IMG_9661 (640x480) (2) シェルターと上部の植栽地

 記事中「トンネル」という言葉が使われていますが、ここは山地をくり抜いたトンネルではなく、斜面を削って道路をつくり、その上にコンクリートのシェルターをかぶせ、その屋根部に土を敷き植栽した「人工庭園」ともいうべきものなのです。

 なぜ、こんなに面倒なことをしたのでしょうか。「道路建設は環境破壊」という世論に対して、「環境に優しい道路をつくる」とした道路建設の象徴、「道路が出来ても自然は壊されていない」証拠が必要だったからとしか思えません。

 「(分断された)森の非連続性を復元する」とし、「相生山の中の土を運び、相生山で採取した種子や実生苗」を植え、苦労して「育て」てきた「相生山の森」。しかし残念ながら、人工の森です。その証拠に「維持するため、適宜に間伐しなければならない」(市の施工ワーキング報告より)とされ、現在も「手入れ」が続けられている様子です。  
  シェルター上植生2014324 (640x480) シェルター上の植栽地2015.3

 人が土を運んだり、種子を蒔いたり、間伐を要する「自然の森林」など聞いたことがありません。
 森林は地球の歴史の中で形成された地質や土壌の上に存在していますが、この「森」の浅い底はコンクリートで固められています。大きく伸びた高木層の根はどうなるのか、私はいつも「天空の城ラピュタ」の映像を想像してしまいます。
  
 もっとも、権威とされている大学の先生が「ホンモノの森づくり」と称して各地に植栽する活動がブームになったりしました。でも、その経年変化や結果は自然とは、かけ離れたものになっているようです。相生山のこの「人工庭園」においても、相生山緑地内のどこにも生育していないカラスザンショウが大きく育っていて、「相生山の自然とは別物」と実感したことがあります。

シェルター上から見える景色14323 (640x480) シェルター上から名古屋市街を望む

 シェルターの存在は、道路建設にとっては「環境破壊」の目隠しであり、今となっては残念ながら「ムダの象徴」でしかないように思えます。このシェルター上でのヒメボタルの消長が、「これからは自然を大事にしていく精神でいく(河村市長2014.12.26)」相生山の未来構想にとって意味があるのでしょうか。
 「人工庭園でのヒメボタルの経年観察結果」というテーマだとしたら、私たちにはその試みの意義が理解できません。だって、すぐ隣りに、包み込んで広大な、人びとが長い時間つき合ってきた自然豊かな森があるのですから。
 
 また、ヒメボタルだけが相生山の自然ではないので、そのデータだけをとって云々することには共感できません。このことは後述します。

 新緑①IMG_5465 (2) (640x427) 新緑のコナラ林
  
 さらに問題なのは、長谷川さんのコメントとして紹介されている以下の部分です。「(ヒメボタルの減少に対して)事業のストップで市が緑地の手入れを中断している為ではないか。結論を急ぐ必要がある」

 このブログでも、「森の手入れ」についてはくり返し問題提起してきました。タグ「森の手入れを考える」こちら また出てきたか!と正直思いました。
 人間が「手入れ」をしなかったら、自然が滅びるなどと考えるのは、人のおごりでしかありません。自然はヒトの生存の命運も掌中にしつつ、超然と存在しています。自然の遷移の中で、ある種が滅びたり、繁栄したりは普遍的にありうることで、人がどうこうできるものではないでしょう。なので、自然とのお付き合いは楽しいのです。

ヒメボタルbyminorDSC05649 - コピー (2) 「秘密の小径」のヒメボタル

 相生山緑地に、あるいはその近辺に長く住んできた人びとの話では、「子どもの頃は(半世紀以上前)今の比ではなかった。森の中の道にジュウタンのようにヒメボタルが光っていた。しかも夕方の早い時間から」とのことです。ここ数年のことではなく、長期でみた時、ヒメボタルは減少傾向にあるのでしょう。

 その要因は、自然の流れなのかもしれませんが、人による都市の拡大であったり、人も大いに関係しているとされる「地球温暖化」であったり、相生山の道路工事の影響も考えられます。工事が始まってから、キジやフクロウなどの野鳥やタヌキなどの哺乳類が姿を消したと聞きました。こうした人為的な生態系への改変、その動向にこそ注意を払う必要があると思います。

 そして、それは短期ではなく長期にわたって、部分ではなく多岐全般にわたって、調査し分析し、結論を導き出すものでしょう。そうしてこそ、比較的正しいと思える方針が提起されるものと考えます。そうしてもなお絶対ではなく、比較的です。自然とのつき合いはそうしたものと考えています。

 そのときに忘れてならないのは、その調査や分析・考察している間にも、破壊が進むかもしれないということです。私たちは、明らかな「人による自然破壊」を警戒し続けていきたいものです。     

 <次回に続きます。ご意見をお待ちします。関連してタグ「道路は要らない」こちら にも目を通していただきますように。>

     by Oak.+アイ


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Re: どこもかしこも開発

ふくちゃん
 コメントありがとうございます

> 相生山は、その中や近所に人が住んでいたから、道路が止められた山、ですよね。

なるほど!確かにそうですね
森を人が利用させてもらい その役割も分かっていたからこそ  
道路建設という環境破壊に 敏感に対応できたんですね

> 道路でも住宅でも商業地でも、木を植えたり芝生と花を咲かせておけば環境に良いなどと堂々とうたって、やっちゃうところは、すごいですよね。相生山の道路のコンクリートの上でも、それと同じことがやられていた。しかも、道路中止になっても未だ未練たらしく。

利便性や利益には貪欲 「開発」決めてから 後づけの「保護・保全」対策
どこかで止めないと 無理が通れば道理引っ込む 取り返しつかない 

> 空気を冷やしてくれる森を、町中に残しておいて欲しいと思います。
> 市民がしっかり見ていないと、自分たちの税金使われ、一層、夏地獄です。

みんなで見ていないと 声を上げつづけないと
自分たちで 自身の首を絞めてしまうことになりますね

どこもかしこも開発

相生山は、その中や近所に人が住んでいたから、道路が止められた山、ですよね。

人が住んでいない山は、山主が売れば、すぐに開発されてしまいます。
緑区も、雑木林は丸ごと壊されています。
50年もつのかなぁと思うような同じ形の家がいっぱい建てられています。
空気を冷やすことができる木が街に必要なことなど、いつまで経っても気にもかけない。どんどん夏が暑くなって住み辛いです。

土地の狭い日本では、お金儲けのために、どこもかしこも切り刻まれてる気がします。これって、田中角栄の「日本列島改造論」がまだ続いてる?のでしょうか?

道路でも住宅でも商業地でも、木を植えたり芝生と花を咲かせておけば環境に良いなどと堂々とうたって、やっちゃうところは、すごいですよね。相生山の道路のコンクリートの上でも、それと同じことがやられていた。しかも、道路中止になっても未だ未練たらしく。

金、カネ、かね。ありきで、専門家も、政治家も動いちゃうところがすごい。

空気を冷やしてくれる森を、町中に残しておいて欲しいと思います。
市民がしっかり見ていないと、自分たちの税金使われ、一層、夏地獄です。

Re: No title

無記名さん
 コメントありがとうございます
 蛍の夜 ご一緒したことがあったでしょうか

 昼間の森でお待ちしています 「相生山の四季を歩く会」でも それ以外でも
 ご連絡ください http://lovelyearth.info/toiawase.html

 マスコミ報道などを通じて 相生山への関心が広がっていくことは嬉しいです
 そして言われる通り 不十分な点を このblogが補えていれば幸いです
 
 調査の件は それなりの調査や報告を受けて名古屋市長が判断されたと理解していますが
 > 一つの森を中途半端に手を出してしまったツケ
 > 人が森を残すのにその二倍三倍の努力や時間は掛かる 
 ということなのかもしれませんね

 これからもよろしくお願いします 

No title

長谷川女史に面と向かって聞いてみたい、話してみたいわあ、との感情に駆られていましたが、この文を読んでスッキリしました。

No title

この記事を読んで良く分かりました。知らなかったですが、コンクリートの上での[自然]なのですね。全部がそうでは無いのに、新聞だけだと道路工事の終わった所はトンネルになっていて、その上では蛍が減ってる、それなら守れてないとしか思いませんよね。何とかしないといけないのではないかと。

正確な調査は必ず必要だと思います。ヒメボタルの事、森の自然の事、周りの渋滞、緊急車両の必要性と。多岐に渡って、きちんとした調査が必要だと思いました。でも、今までして来なかったのかしら。

一つの森を中途半端に手を出してしまったツケだと思います。人がやった事ですから、人が森を残すのにその二倍三倍の努力や時間は掛かるのだと思います。

相生山へは蛍を見に行ったことがあるだけです。今度はぜひ昼間に行ってみたいです。
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